【第4日目 5月2日 】

今日は立山最終日で、毎度の朝風呂を楽しむ。帰り支度をしながら同じ相部屋の背の高い女性を何気なく見ていたら、えっ?もしかして・・・・と思い、声をかけた。「あの〜、昨日大走りルート登ってませんでしたか?」「ええ、登ってました。登ってましたよね?」「ああ、やっぱり!」「単独なんでそうかなって。」「とっても登るの速かったですね。真砂まで登っていた時に男性が一人先を歩いていたけど、その後見えなくなってしまって、あなたたちもどうされたか不思議に思っていたのだけど?」「内蔵ノ助カールを下見に行ったんです。大丈夫そうだったので、戻って3人で上の方だけ滑りに行ったの。」「わぁ〜〜!いいなあ〜〜。」「ピッケル、アイゼンなんで、気合入っていると思っていたんですよ」 よくよく会話をしていくと、170センチと長身で美女のボーダーというと、去年も同室にいた人? 向こうも、実は私のことを単独で来ている人と覚えてくれていて、話が盛り上がった。 彼らは、雄山山頂からの御前谷を去年も今年もやっていて、なかなかハードバーンを得意とする人達だ。ボードはハードバーンに強いというけど、御前谷はボードのシュプールだらけという話なんかも聞けた。


そんなおしゃべりなどしていて、今日もゆっくりスタート。あまり早く着き過ぎて雪が緩んでいないのもと困る。今日も快晴で、これだけ毎日お天気がよいGWも珍しい。シールを付けて一の越へ。今日も既に長蛇の列。つぼ足やアイゼン、シール、スノーシュー、担ぎ上げ、スキーを裏返しにして引いている人等々、本当に様々な形で登っている。祓堂付近からは、最後の急登に備えて、やや右の斜面にジグザクに切って登ることにした。行列を離れてほっとした。浄土山山頂付近より、エクストリーム的にかっこよく滑るスキーヤーもいて、思わず見とれてしまう。岩の間をあんなにスピードつけて滑れるなあ。


ゆっくり登って一の越到着。ここでまったりと、景色を楽しむ。槍穂高はもちろんのこと、北アの山々がずらっと見えて満足。それにしても雪が少ない年だ。雄山へは全くの夏道のようだ。一時間ほど休憩してから出発。東一の越に滑りに行く人を探していたが、御山谷方面に降りていく人ばかりである。東一の越へは夏道の始まりらしきが微妙にあれかどうか?(単に自分の視力が悪いのがつまずきのもとだった。)


いよいよ滑り出し。御山谷を少しだけ滑走。あまり降りてしまうと、登るようになってしまうので慎重に滑走する。あっという間にハイマツ帯に到着。シュプールの跡もあるし、少し踏み跡もある。これでいいかちょっと疑問だが、一応スキーを外して、歩行モードにブーツを変えてスキーを束ねて担いで歩き出す。しばらく歩くと間違いに気づく。上過ぎたようで、まだ夏道が全然見えない。ハイマツ帯と雪のミックス斜面だったが、案外雪が締まっていてズボズボこないのは助かった。ここでGPSを見てみると、夏道をインプットしてきたが、高度にして約40m位自分は高い位置にいることが判明。すぐ下に御山谷の斜面が見えているので、恐怖感はないので、このまま自然と高度を落として、夏道に合流することを願って進むことにした。


皮肉なことに、今になって何人か御山谷を滑走して東一の越の正しい夏道ルートに到着している。あそこが、正規の夏道の入り口か・・・・。ハイマツ帯が、がくんと急に落ち込んでいるのが先方に見えたので、これならば、ダイレクトに雪の斜面に降りた方がいいと思って、スキーを手に持って一歩一歩雪の斜面に降りることにした。ハイマツ帯が終わって雪の斜面にたどり着いたら、斜度は60度ぐらいあって立ったままでは降りれない。(苦笑) 一歩一歩スキーを斜面に突き刺してお尻をついて降りることにした。右手にスキー、左に両ストック。何歩かうまくいきかけた所、斜面に耐えられなくなって、滑落〜〜〜〜〜!!! それも、瞬時にスキーを両腕で抱えたので、スキーごとの滑落でザラメ雪を滑る。おまけに、頭からでんぐり返りも2度位してしまったようで、ぐるぐるになったので自分でもよくその状況は把握できていない・・・・。距離にしたら10mほどで済んで、ザラメなので幸いに止まってくれた。ほっ〜〜、よかった〜〜〜。それにしても、よくスキーを流さなかったと我ながら感心してしまった。束ねてあるので一気に流れることはないとは思うものの、流してしまったら大変である。怪我もなくてほっとした。


冷静になって見回すと、ストックだけが、滑落地点付近に残置されている。スキーを斜面にしっかりと突き刺して、ザックも落ちないように斜面を削ってしっかり固定。それから、空身で登り返す。本当はザックにつけてあるピッケルを外して使った方がよかったが、ザックから取り外すのがちょっと危ないので、手を雪の斜面に突き刺して(薄手手袋してたけど冷たかった・・・・)キックステップで登り返す。やっとストックを回収して、今度はそのまま一歩一歩山側を向いたまま降りる。久々のつぼ足の急斜面登下高だった。


デポ地点に戻って、つぼ足のトレースが比較的近くにあったので、そこまで慎重に行き、あとわずかで夏道がでている所に到着!!やれやれ〜〜〜。この時ほど、夏道をありがたいと思ったことはない(苦笑)


ふっ〜〜〜。一の越あたりからもこの辺りは丸見え?なんで、かなり恥ずかしい。さすがに緊張が解けてほっとした。写真でミスった所を撮ろうとしたけど、ハイマツの影でうまく撮れず。ザックにスキーを固定していると、3人ほど滑ってきた人達がいて、狭いこの場所も満員なので歩き出す。夏道と雪道が交互にでてくる。ちょうど、一の越を大分前にスタートしたガイドパーティーの大部隊が、御山谷を大岩ぐらいまで滑って、そこからガラ場を急登している人達に遭遇(ザイルを張って登ってきていた。)ちょうどガイド達がザイルを回収している所だったので、その後ろをゆっくり歩くことにした。ガイド助手と世間話をしていると、私も知っている名古屋のパワーゾーンというツアーだった。この日は14人位で3人がガイドさんという。


何箇所か、御山谷を見下ろす形で雪の斜面をトラバースする所があって、シーズン最初で自分でトレースをつけるとなると、ちょっと厳しい個所もあった。そういう局面ならば、やはりアイゼンは必須に感じた。しかし、この日は連休も半ばで、高速道路状態でしっかりとトレースがある快適な見晴らしのよい道だった。風が少しあるので、ヤッケを着ていて正解。割とあっという間に東一の越に到着。


既に到着していた人達もかなりいて、なかなか賑やか所だった。早速斜面を見てみるが、いつもロープウエイで見るほどには急斜面でなくてほっとした。特に斜面右側は、楽な感じだ。真っ直ぐ下の斜面は、ちょっと見下ろしにくい感じでなかなか斜度あるかも。滑っていく人達を何組か見送る。タンボ平中央は大分連休中にデブリが落ちていた。右の斜面を降りすぎると、違う沢に降りてしまうので、そこが要注意だ。デブリの下の斜面を行くとその谷に引き込まれそうな感じがするが、どんなものだろうか?


先行していたパーティーを観察していると、大分経ってもデブリの中で立ち往生状態。ずっと見ていたが全然進まないので、そんなにあそこまで距離あるのかなあ? どこでも初めてのコースというのは距離感や時間的感覚がつかみにくので心配な部分がある。そんなに滑りにくいのだろうか?本当は彼らがどうルートを抜けるのか見ていたかったが、ガイドパーティーの後ろでは、さらに斜面が荒れるので、滑り出すことにした。


さて、いよいよロープウエイからも丸見えのタンポ平の滑走♪♪ 立山最後は、斜面中央ラインを狙う。滑り出しは下が見えないので、やや右から中央のラインに滑り込む。わーい、なかなかの斜度で最初は35度ぐらいかな。急斜面だが、ザクザクなので安心。シュプールもそこそこにあるので、斜面は若干荒れているが、まあまあの感じで一度上を見上げるためにストップ。上を向くと青い空がコントラストになって映えている。そこから下は、斜度も大分緩くなって、荒れていない斜面を探して左に行ったり右に行ったりしていたら、なんだかあっという間に下まで着いてしまう感じになったので、高度を下げないようにして、そのままタンボ平中央に滑り込む。


そのまま滑っていくと、自然とデブリの中のルートに導かれてしまった。数日前に落ちたもののようで、大分表面も落ち着いていて、トレースもバッチリある感じだ。この位置からデブリのない下の斜面に抜け出るのもかえって時間がかかるので、とっさの判断で一気にそのまま抜けることにした。あまりいい気分はしないので、波乗りサーフィンみたいな感じで、デブリ畑の中のトレースをかなりの高速で抜ける。デブリは相当大きな塊もあった。上からずっと見ていたパーティーが2、3組いたので現在デブリ畑に7、8人はいるが、全員ごぼう抜き。危ない場所なので、何よりもスムーズに抜けることが肝心だが、技術的に降りれない人が何人かいるようだ。自分は、結構心臓バクバクだが、安全な場所まで転倒しないように、一気降り。やっと、デブリを終了して、ロープウエイの近くまで到着。止まって上を見ると、やっぱり安全でないので、すぐにもう少し下の台地状の所まで降りてやれやれ。時計を見ると5分しか経っていなかった。(笑)


上着を脱いで、ほっと一息。さすがに春の雪は疲れるなあ。しばらく休んでから、再びゆっくり滑走。ロープウエイ駅付近で、名残惜しく山々を仰ぎ見ていると、先ほどの抜いていったパーティーがやっと到着。自分は、次なるお楽しみの黒部湖への樹林帯の滑りに突入。


雪は汚れているし、うねりもあるので、こういう時は先陣のシュプール跡をなぞり、外さないように進む。止まらずに快適に樹林の中を進む。うまい具合に方向的にも合っているようで、樹林が密の割りには滑りやすかった。今年は、何回か樹林コースを滑っていたお陰で、大分慣れた気がした。(多分去年までの自分なら、かなりビビってしまったかもしれない。)方角的には、そろそろ右の方に行かないと、ロッジくろよんには行けないと思ったので、尾根の分岐点付近でストップする。GPSを出して確認。ちょうど、その時に男性2名が後ろから滑ってきた。一人がガイド風、もう一人は完全なゲレンデスキーヤーという感じ。声をかけたら、ガイド風と思った人は、過去に2度ほど滑ったことある人で、もう一人はタンボ平でなくて、ここだけを滑りに来た人だった。たまたま出会って案内してあげている感じだった。


過去2回の人に聞くと、この分岐から左に滑って行くと、ロッジくろよんよりも、大分ダム側に近い所に降りれるという。シュプールも、右のロッジに降りるのよりも左の方が鮮明だった。彼らにくっついて降りることにした。スキーは、やっぱり滑走技術だと思うけど、私よりもうまい人達だったので、ゲレンデスキーヤーが先頭、適宜もう一人が後ろから指示をしていく。うまいライン取りで荒れた斜面もスムーズに滑っていくので、3番目の私はそれを辿るだけでなかなか楽だった。自分だけなら、もっと大変だったと思う。途中で写真を少しだけ撮ったので、彼らに追いつこうとラスト100m位の所で今回の山行で初めて滑走中に転倒! 樹の根に引っかかってしまいました(笑) すぐにリカバリーして、最後の林道にフィニッシュ。


一気に滑ったので、さすがに息が切れました。滑ってきた斜面を見上げると、そういえば毎年このあたりから降りてくる人を見ていたなあ。その頃、ちょうど右の尾根の方から、女性の甲高い声がして1パーティーが大苦戦中の模様。このルートは、誤まるとダムにダイレクトに落ちる急斜面に出てしまうので、ドンピシャに降りないとまずい。なかなか自分はコースに知っている人に出会えてラッキーだった。


滑走終了地点から、かんぱ谷橋には5分ぐらいで到着。あっけなく黒部ダムだった。相変わらずの混雑ぶりだが、混んでいる割りにはスムーズに扇沢に到着。バスでそのまま信濃大町駅に向かい、次の目的地の白馬・栂池高原に向かったのでした。



一の越への登り。 槍穂高から裏銀方面の山々
御山谷の滑り出し。夏道ルートをここでよく確認できていれば・・・ 夏道に着いてやれやれ。
東一の越は滑り出す人が待機状態。 東一の越にて
タンボ平に滑り込む。右の沢に入らないように。 右の斜面から降りるのが楽な滑り方のようだ。
真ん中のラインから滑降。見上げると青い空が眩しい。 ロープウエイ駅直下の斜面まで一気に滑って上見たら、
ここにもデブリがあってすぐにもっと降りる(^^;)
東一の越。デブリは近くで写真撮らなかったが、相当大きなスケールだった。 デブリの中を越してきて。まだデブリの中には何人もいた。
針の木岳が正面。ここから、樹林帯の中を滑って黒部湖へ タンボ平にて。バックが滑ってきた東一の越
コースを振り返って 黒部ダムへの最後のラストラン



おしまい  \(^O^)/
長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。








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