針ノ木雪渓・マヤクボ沢 〜途中敗退〜


針ノ木雪渓は夏まで残雪が残る所なので、毎年GWの終わった後に計画してきたらお天気に恵まれず毎年計画倒れになっていた。今年こそはと思ってGWの前半に行こうと予定していたら、行けない事情になり、それで1週間前倒しにして行くことに決定。実は夏山でも行ったことない所なので、楽しみ♪



 山域 / 形態 北アルプス / 山スキー
メンバー MINMIN
コースタイム
2005年4月23日(土)
前夜 新宿発(JRムーライト信州 ) 信濃大町駅着 5:08 
バス 6:20発  扇沢ターミナル 6:45頃着
出発 7:40
大沢小屋のやや上あたり 8:35〜45
峠との分岐よりやや下あたり 9:53〜10:00 
モレーン状台地(本日の最高到達地点) 12:15〜13:00
休憩 13:45〜14:00
扇沢着 14:25

登山情報
●扇沢のターミナルはコインロッカーもトイレも食堂も売店も完備していて、とっても便利。ただし、観光客の数は凄い。




GW前の信濃大町駅からは始発のバスに1時間以上も待つけど、地元の方曰く前夜は山の方は猛吹雪だったそうなので、あまり早く行ってラッセルになるのも嫌なのでちょうどよい頃合の到着か。アルペンルートも富山県側の車道の除雪が間に合わずに一部閉鎖。とんでもない春の雪だったようだ。扇沢に登る車道も雪道になっていて、夏タイヤでは坂を登れず残置された車も見られた。


扇沢は前夜が嘘のような素晴らしい青空が広がっていて、これからの山スキーがとっても楽しみだ♪ 扇沢のコインロッカーに置いていくものなどを選んで荷物整理。前回のように東京に帰るための靴などを持って縦走するのはたまらないので、このようなピストン登山はやっぱり気楽でよい。今回は前回の反省もこめて軽量化を意識したが、この時期の針ノ木岳の登頂にはピッケル・アイゼンが必要だが、GW前のこの時期に無理して怪我などはしたくないので最初から登頂は目的とせず、マヤクボ沢のコルまでを目標とした。よって軽量アイゼンだけを持って行くことにした。


スキーに最初からシールを貼ってザックにスキーを取り付けた。どこから取り付くのか?と思って車道の方に行ったら、すぐゲートの所からスキー跡あり。もう少し下のあたりから取り付くのが事前情報だったが、高度を下げるのももったいないので、取り付き点でスキーを装着した。そしたら男性5,6名と女性2名の団体さんやその他2名位が脇をつぼ足で通り抜けていく。私はさっそくシール走行で歩き出したところ、少し流れがでている小さなスノーブリッジを発見。スキーで通過できてほっとした。その上の上がった所で、団体さん達がシールをつける作業をあちこちでやっていた。そこを速やかに通過して行くと、前夜降った真っ白な雪にシールの登路がふかふかの状態で先へと進んで伸びていた。完璧に青い空と白い雪と最高な気分である〜♪♪


雪の道はシールが気持ちよく効くが、少しトレースを外すと前夜の積雪が恐らく最低でも20〜30センチはあるためにずぼずぼである。なんて綺麗な雪の景色だろうと思いながら登っていると大沢小屋の上のあたりまで到達。ようやく体力自慢のような先ほどの団体さん集団が追い上げてきた。(こっちが煽られているような感じで嫌だなあ。。。)よりによって、私がゆっくり休んでいる所に集団で休憩。居心地が悪くなったので出発 (^^;)


ここからは、しばらく登っていくとデブリが出てきて、そのデブリ山の中を巧みにルートは作られていた。こんな塊が上から転がってきたら、まずは助からないだろうな・・・・。それが終わると、やや傾斜がきつくなってきたと同時に、風が強くなってきた。最初は風が吹いて爽やかで良いなんて思っていたけど、風に雪が舞いだして、ストックで耐風姿勢を取らないと前進不能状態となった。風雪に耐えながら顔も手も冷たくてたまらないが、たぶんこのあたりが後で考えるとノドと呼ばれるあたりだったと思う。先行のシール跡も瞬く間に消されてしまって、雪面は硬くカリカリしてきて、慎重にシールで登らないと滑落しそうだ。風にはリズムがあって、やや緩くなった合間に前進という感じである。かなり苦労して登り切って、やっと少し傾斜が緩んだところで慌てて上の雨具を着用。手袋も暖かいものをつける。


この時までに空は晴れているものの冬山2月ぐらいの厳しい気象状況に変貌した。針ノ木峠方面には誰も登る人がおらず、皆がマヤクボ沢方面に登っていく。そこからは再び徐々に傾斜が出てくるが、この日のルートは山頂にダイレクトに登るルートだった。しばらくすると例の団体さんの男性陣が追い上げてきたので道を譲った。ところが、これが失敗だった。男性はこの時までに4名ぐらいになっており、後ろを振り向くと女性やリーダーが相当に遅れた形で登ってきていた。よく見ると若いお兄さん達と思っていたが自分よりも年上のようだった?皆さんスキーは流行のカービングの重そうなアルペンの板に、ディアミールなどの山スキー用ビンディングをつけていた。ところが彼らはしばらくすると急斜面で方向転換ができなくなってお手上げの状態になってきた。完全渋滞・・・・。気温は低いし、待っているのも辛い。追い抜くのも斜度が結構あるのでちょっと難しい。1人は兼用靴だったのですが、前の3名はガチガチのゲレンデブーツであることを今頃になって発見。!! これでは、方向転換は厳しいですね・・・


彼らの中には、不安そうに私に「あの〜、この斜面だとスキーを外すべきでしょうか?」と聞いてきた人もいて、私も「シールで登れるかどうかはその人の技量によるので、なんとも言えませんが」としか答えようがありません。(苦笑)
しかし、実は上の方でシールを断念した全く別の方が、あと距離で3m上がればブッシュ交じりの場所に登れるのでスキーを外してつぼ足で登ろうとしているのですが、30分位経っても登れておりませんでした。雪が腰のあたりまで埋まってしまってほとんど蟻地獄状態の新雪の深さなのでした!!斜面が厳しければアイゼン歩行に切り替えればいいや・・・・式の発想では新雪は戦えないというのが身に沁みて実感できた光景でした。



さすがに、あまりの渋滞にたまらなくなって彼らを抜き、そこの斜面をクリアしたら正面はガレになっていたので、やや右の斜面に行く。このあたりから、上から降りてきた人達が3人ぐらいいたので聞いてみると、上はやはり相当に厳しい風も吹いているので山頂方面は断念で降りるとのこと。でも山頂に向かっている人達もいますよということだった。右の斜面はカリカリの斜面のトラバースだった。下を見るとあと200m位標高の低い位置ぐらいに、10名近くの人達が右に一斉にトラバースしてそこから滑降体制になるようでした。やはりこの日の気象状況では引き返しも妥当なところでしょう。


やや左手上に、ハイマツの所からモレーン台地に登れるような踏み跡が見えました。ガレ場になっているので、スキーを外す必要があります。一段高い所に上がればヤレヤレのようです。スキーを慎重に外しますが、左足のスキーの流れ止めが凍り付いて外れません(汗)以前から、寒い季節では凍てついて外れずに困ったことがあるのですが、今回は勘弁してくれって感じです。ディアミール2の性能は定評があるけど、流れ止めだけは良くないという評判はまさにその通りです。(次からは流れ止めは早速変更しました) 結局、左足はつぼ足になったものの、スキーの流れ止めが取れずにつながれたまま、左手にスキーを持ってやや屈みながら中腰の変てこな格好でやっとのことで平坦なモレーン台地に上がることができました!!ほっ〜〜〜・・・


ちょうどそこには男性の単独の方が一人いらしたので、その方の少し先でザックを下ろしてすぐさま、流れ止め外しの作業です。寒い風が吹く中で、手もかじかんでしまって完全に痺れてます。焦れば焦るほどに外れない気がしました。たぶん10分近くは格闘したかもしれません。諦めて貴重なテルモスお湯でもかければ溶けるかな? 逆にすぐに寒いので再凍結するかもしれないな・・・とか考えながら乱暴に最後にガンガン叩くようにしたら、ようやく流れ止めが外れてほっとしました。(大苦笑)


ここは山頂からの吹きさらしみたいな所なので、本当は30m位右の大きな岩の陰に行きたかったのですが、先着の方がお一人見えます。邪魔しちゃ悪いかなあ・・・・と遠慮勝ちに考えてしまったけど、今では後悔してます。とにかくお腹が減っていたので、むしゃくしゃと食べてほっと一息。少し一息ついて落ち着いてあたりを見回わすと、山頂を目指す人達は豆粒のように約10名ぐらいがぽつぽつと白い斜面に見えます。まだ先頭は稜線に達していないようでした。ここからは標高であと300m位はあるようなので1時間以上はかかるので、ここで引き返すこととしました。(たぶん標高2550m付近)本当はマヤクボ沢のコルの稜線に立てたら剣が見えていいなと思っていたのですが、今日はそちらの右の稜線に向けて登っている人は一人もおりませんでした。一応応地図で確認しましたが、地図を開くのもしまうのも大変な風が吹いておりました。厳冬の景色さながらです。さて、いよいよ出発しようと思ったら、シールを外すのを忘れておりました。(苦笑) シールのシートを風で飛ばさないように気をつけてやっとシールを外して、スキーを束ねて、手に持って大きな岩の所まで行くことにしました。


例の団体さんはかなり遅くバラバラになって登ってきて、やっと全員が登り切って大岩の所に到着した頃でした。大きな岩は、思ったよりもずっと広いかったのでさっさとここにくれば良かった。風を避けて少しほっとしました。隅の方で斜面の様子やら、風が少し収まるのを待っておりました。なんだか、私の方を盛んに何度も見ている赤いバンダナの男性がいらっしゃたので、この人はさっきの団体さんの人? よくわからないけど、まあこっちは、これから滑る斜面の事に頭が一杯です。(笑) 滑る斜面は下から見て一番右のマヤクボ沢のコルから一直線に降りる広い斜面のルートですが、今日はなんとノートレースのよう?!今まで途中で降りていった人達はいずれも登った中央の斜面のあたりから滑り出しているので、恐らくこの斜面をこの高い位置から滑っている人はいなかったみたいです。



k風はなかなか収まらないので、意を決して斜面にゆっくり出て行く。最初はカリカリとして、斜面を見通せる左手まで歩くような感じだった。斜度は25度ぐらい?なのでよくあるスキー場の中・上級者斜面ぐらいだろう。ガスってはいないけど、暗くて斜面が見えにくい。さて、滑降開始♪ ゆっくり滑り始めたが、パウダーやや重めで気持ちはいいけど、スキーがうまく浮かせずになんかバランバランな滑り。数ターンで一旦停止。それなりにターン弧を振り返って、まあまあ自己満足。さて、もうちょっと大胆に滑ろうかなって、滑りだして加速〜♪ おっととっと・・・体のバランスを壊してパウダーに突っ込みました。サングラスも雪まみれだったので外したところ、あらあらっ雪面が裸眼の方がずっと良く見えるじゃないですか! 今まで見ていたよりもずっとああたりは明るかったです(苦笑) 


そうこうしていると、上にはまるでどこかのスキー場のレッスン風景のようにインストラクターが最初に滑り出して、次に生徒さんが順番に滑りだすような感じで先ほどの団体さんが滑り出しました。スキー教室みたいで、巻き込まれないようにさっさと降りようっと♪ すると、下から見て左の斜面の方で上からシャープなショートターンでどんどん降りてくる方がおりました。思わず見惚れててしまいました。もう一人の方も直線的なラインで降りてきてます。どうも、私の滑っていたラインよりも左の方がやや滑りやすいようなので、そちらにラインを変えて、滑っていくと、おっ〜調子がやっと出てきましたぁ〜!! それにしても
シーズンはゲレンデの滑りが足りないから体がリズムをすぐに刻めないのが情けないなあ〜〜なんて想いが走馬灯のように脳裏をよぎりながら滑走していたら、あっという間に針ノ木峠方面からの斜面と合流しました。


見上げると、もさもさの斜面でしたがそれなりに楽しかったです。ここまで来ると、シュプールはものすごく一杯で、どうやら上まで行かずにこのあたりから降りた人が大変多かったようです。今まで見なかったパーティーが一杯滑っており、どの方もかっこよく滑っている人は少なくて、合流点付近は緩斜面なのに変です? まずは滑ってみると、今までよりも雪質がパウダーではなくなってきたけど、得意なややザラメ調。調子が乗ってきて、特に上から見て左斜面のノートラックの所は最高に気持ちよくショートターンが今回初めて決まって嬉しい♪緩斜面だけど気持ちよかった。


さて、どんどん滑ろうと思っていたところ、なんか変!! 急にスキーが操作不能のような状況に・・・・ 他の人達も立ち止まったり、あちこちで転倒している人ばかりです。滑っている人の方が少ないのです。恐怖の超モナカ状態に雪が変身しておりました。最初はわからずに、普通にターンをしようとしたので転倒。モナカ雪というのは表面がモナカのようにバリバリとしていて、中の雪はもさもさしているような状況を言うのですが、山スキーの経験がまだまだ浅い自分は前に1度経験したぐらいですが、ここまで凄いのは初めてでした。直滑降もできませんし、パラレル状態でスキーを回すのは至難の業。やむなくほとんどシュテムターンで滑るしかありませんでした。体は滑ろうとしているけどスキーが走らないので何度か体だけ前にゆっくりと投げ出されるような感じでの転倒が多かったです。勝手に自分で「おっととっと転倒」って名付けました。\(^〇^)/ 格好は問わずに安全な滑りだけを心がけました。いつもは楽しい滑りの時間が、このときばかりは「苦行」でしかありませんでした(涙涙・・・) なんだか、気分は「砕氷船」です。自分の開いた足がまるで船で氷=モナカ雪の表面の凍った部分を砕きながら進んでいるのにそっくりです(爆笑) 「砕氷船だ、え〜っさ、ほいほい〜♪」って半ば自嘲気味の滑りでありました。


やっとあのデブリ村に戻ってきましたが、右岸の高い位置でモナカを割りながらのトラバースですから疲れた〜〜。太ももはガチガチ、へとへと状態なので皆さん休憩しております。私もやっとやれやれという気持ちで休憩です。滑り終えた斜面を見上げるとやっぱり皆さん悪戦苦闘中。なんだか、急に暖かくなって春山に戻った気分です。そういえば今回は一度も記念写真を撮っていなかったことを思い出して、近くにいたいかにも山屋さん系(ピッケル、スパッツや使い込んだザックから判断)の方にシャッターを頼んだ。たまたま、少し雑談をしたら山スキーメーリングリストに加入されている方で、私もそうなのですよということから、その方が相棒を待っている方が、実は私もたまに拝見しているHPの管理人さんだということが判明。ちょうどその方が滑り込んできて、先ほどの大岩の所で私を何度も見ていた方だとわかった。話をしていると、今日のラッセルの先頭はこのお二人だと判明したので、本当に感謝の気持ちで一杯です。「ラッセル代わって欲しかったよ」って言われてしまいましたが、バスで来ているからそんなに早朝扇沢には到着できないのですと弁明いたしました(^^;) なお、登頂は山頂の雪庇に阻まれて本日は誰もできなかったことと、稜線に出ても真っ白で何も見えなかったということでした。


本当はもう少しゆっくりしたかったのですが、帰りの時間も気になるのでお二人より先にスタート。ここからはもう緩斜面で、全て堰堤も埋まっているような所が多いので中央を滑りますが、今度はモナカというよりもシャーベットが無理やり固まったような斜面で、これまた気合の入らない滑りというよりも単に高度を下げるためだけの砕氷船の続きって感じでした。重たい雪の抵抗を感じながらもやっとマシになったと思ったら、朝の壊れそうなスノーブリッジに到着。再び渡って扇沢に到着。ちょうど空からは春の淡雪がぱらぱらと落ちてきた。


慌しく帰り志度をして、バスに乗る直前にトイレに寄ったら、なんとあのスキーレッスンみたいな団体の女性とばったり遭遇。話をしてみると、某スキー場のスキースクールの先生が生徒有志を募ってのバックカントリースクールだったという。彼女はいきなり山スキーデビューがここではちと辛いですね・・・。信濃大町でバスを降りると一日に2本しかない東京方面の特急があと2分位で発車するところだった。スキーはバスの外の荷物入れに入っていたので、血相変えて開け方がわからないので扉をバンバン叩いていたら、慌ててバスの切符売り場の係員が出てきてくれて、やっとスキーを引きずり出して、信濃大町の駅の中に飛び込んだ。特急に飛び乗って心臓バクバク、あ〜疲れた、お疲れ様でした♪



なかなか気象状況や雪質のめまぐるしい変化が体験できて、大変勉強になった山行だったと思う。いつも良い状況ばかりを体験している、いざという時のリスクなどを甘く見てしまいがちになるので、自然が自分に与えてくれた良い機会だと思った。久々に冬山のような厳しい環境も体験でき、降ったばかりの純白の雪の景色も素晴らしく、やっぱり山スキーは楽しいなと思った一日でした。(悪雪にも負けない、もっと力強い滑りができるようになるといいなあ・・・苦笑




真っ白な新雪と蒼い空  最高♪ 左には蓮華岳の稜線が見える。大沢小屋付近
蓮華岳右俣滑りたいな (独り言・・・) 夏ならば沢の中?
左に登って行くのが針ノ木峠 あの台地の上までで今回は敗退。
モレーン台地の上(右の大岩に人多数有り) 稜線がマヤクボ沢のコル 山頂に向かう人達 (上の方に点のように見える) 
滑り出しの斜面。向こうは爺ヶ岳方面 滑り出しのところからコルの見上げて。
あそこから滑りたかったなあ・・・
スキー教室みたいなのが右上の方で始まったみたい? このあたりは気持ちよかった。シュプールが綺麗に描けて気分よし
手強いモナカ雪に苦しめられた。ぎっちりとしたシュプールは実はバリバリ 右がデブリ畑。左からトラバース
やれやれ・・・・ お疲れ様でした。






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