【2日目 4月29日】

朝の小屋は4時位からごそごそとする人がいて、朝食を山小屋で摂らないで出発する人も多い。私は朝は温かい食事を摂ってから出ようと朝食6時開始を待って、速攻で食べて山小屋での朝食組では一番で出発。既にかなりの人達やスキーガイドツアーの人達が1時間ほど前に出発していたので、ルートは明確。快晴の空のもと新雪のシールは気持ちがよい。日が当たる前になるべく前進しておきたい所です。昨日の雪はこのあたりは思ったよりも少なくて10センチ程度か?


ゆるゆると登っていくと、テント場を通過。バラバラとテントが点在してます。なかなか気持ちのよさそうな所ですが、昨日の吹雪ならばかなりシビアだったでしょう・・・・。前方にはデブリが登場しているようです。デブリが左に流れている右側をシール登高。以前ならばデブリだけで恐がっていた自分ですが、どうも白馬沢右俣でのデブリ畑などを体験していると、これぐらいのデブリは可愛らしいレベルと感じてしまうので、感覚が麻痺してきたというのか、経験とは恐いものです。見えている直線部分まで到達すると、このあたりが大曲付近か?左に大きく曲がるあたりまではずっと日陰のルートで寒い位でしたが、ようやく日が当たる所に到着したので、ここで1本。見上げると朝一番で登って行った人達がもう一段上でたくさん休んでいるようでした。


ここから上は見るからに暑そうです。それにしても、どこも完璧に素晴らしい白銀の世界で美しい景色のオンパレードで幸せな気分です♪ここからはひたすら槍沢を詰めます。積雪はこのあたりだと部分的には30センチ位は積もっている場所もありました。先行のシールの人に感謝しながらトレースを辿ります。天狗原との合流点では大喰岳方面を覗き込みます。雪庇が出来ているか遠すぎてよく見えませんでした。(できれば翌日に大喰岳東面カールに行ってみたい願望があったのですが。。。。)誰も滑走していないようでしたが、私がもう少し登ったあとで、カールを滑り降りてきた人が上から見受けられました。途中で少し平になったあたりで軽く1本立てます。本当に体力勝負1本って感じの槍沢です。まだ標高差で400mぐらいあります。シールでずっと登っていると、いくらTRABの板が軽くても足はだるだるです・・・・。風がそれなりに吹いているので暑くて堪らないという感じにはならずに助かります。やっとのことで殺生ヒュッテの広場に到着。


ここからがいよいよ肩への最後の急登です。ツボ足登山者も数珠なりに歩いており、階段状のステップあり。スキーを担ぐかスキーアイゼン(クトー)か悩むところです。担いだ方が速いとは思うものの、実は今までまともにスキーアイゼンを使ったことが無いに近いので、ここは経験を積むためにスキーアイゼンを装着します。ここの斜面をシール登高している先行者はおりません。自分でこういう急斜面をシールで登るにはどういうラインで登るべきかを考えながら登っていきます。(シールは得意な方ではないので、単独のこういう機会がよい勉強の場です。パーティーで行くと先に登る人がルートを作ってくださるので。)なかなか斜面はきついし、硬い部分もあり、上に行くほどに風も強くなって、短い折り返しの連続。右の斜面は硬いので、あまり大きくジグを切る自信がないので、ついついツボ足ルートを串刺しにしたり、それに沿うようなシール登高となりました。足のふくらはぎが限界ぐらいに酷使された感じで、ようやくヨレヨレと肩に到着♪ 


肩に到着すると、強烈に風が吹いていて完全な雪山状態で寒くてぶるぶるです。すぐにスキーのまま槍ヶ岳山荘の影になる場所に移動です。小屋の前にはスキーの人が数人いて、どうやら飛騨沢から登って来た人達のようです。明日飛騨沢を滑走する予定なので少し話しかけてみると、山スキーMLで有名な飛騨古川のH氏でした。他にお二人の方と一緒に来ているようです。(どうも、その際には飛騨沢のルートをご親切に教えてくださってありがとうございましたペコンペコンペコン) 



槍澤ロッジから見上げる空は嵐のあとの大快晴♪         初めて見えた槍ヶ岳
暑くならないうちに日陰のルートをシールでスイスイ。前方にデブリが出没予定 大曲の上あたりで陽光シャンシャン☆ 
シールはツボ足と別ルートで登る。10m置き位に竹竿が小屋の方の尽力のお陰であるのがありがたい。
あ〜垂涎の斜面〜!!
ようやく槍の肩に到着 裏銀の山々をようやく見れて嬉しい

しばし小屋の中に入って部屋に通されて休憩。相当に冷え切ってしまったので、昼食食べて一息です。槍沢を滑るのが先か、穂先登頂が先か? 滑りは雪が緩んでいるうちのほうが快適なので、まずは槍沢滑走に取り掛かります。今回は殺生ヒュッテまでの最初の上部急斜面だけにとどめることにする予定です。ザックを背負って、いざ出陣♪二日かかりでようやく滑り出すことができるので気合の1本です♪♪


肩の広場に立つと、風は先ほどと同様に結構強く吹いております。ちょうど小屋で昨日しゃべっていた京都の人達が到着してきて、ギャラリーがいるので照れくさいです。ツボ足ルートに間違って突っ込むと登りの人達が大勢いるので、上からみてツボ足ルートよりも槍ヶ岳側(左側)で滑るようにします。まずはゆるゆると小手調べ。アイスバーンというほどではなく。いざターンを始めると、なかなか快適、思わず「わあ〜〜〜い!」歓喜の声が出てしまったような?ものすごく嬉しい感じでターンが決まります。今シーズン初の待望のほどよいザラメで30度位の斜面をガシガシとターンが決まります。超快感〜〜♪★♪★ 登っている人達の目に止まってしまい、ギャラリー視線が超恥ずかしいです。(見られると燃えるタイプの人が多いようですが、自分は恥ずかしくて、そっとしておいて欲しいタイプなので、思わず立ち止まってしまいました。苦笑)斜面の真ん中当たりから、再び滑走開始します。少し斜面がやや緩くなってきて、ますますターンが決まりまくって、上手くなった気分です♪どこまでも滑っていきたい気分ですが、登り返しを考えると殺生の手前でストップ。


ちょうど、下から登っていて見ていた人達から「なかなか決まってましたよ!」とお褒めの言葉を頂き、なかなか感激です! 滑った斜面を感慨深く眺めます。再び今度はスキーは担いで、先ほどよりさらに立派な階段ができていたので、アイゼンは付けずに登りはじめます。しばらく登っていると、目茶苦茶上手な人がスキーで滑走してきました。斜面の上の方だけ滑るとすぐに登り返し始めました。あまりに上手いので、びっくり。目の保養です。さらに少しすると今度は2名で並んで左右でイチニ、イチニって感じでショートターンの共演が始まったので、うっとりです・・・・・。後でよく考えると、ブーツはゲレンデ用の物だったので、小屋で働いている方達だったかもしれません。


結局40分近くかかって登り返り。(ヤレヤレです・・・・) 再びしばし休憩・・・・。小屋から見ていると相当な人数が穂先に張り付いてますが、なかなか皆さん降りてこないようで、渋滞著しいみたいです。ところが同室になった方でご夫妻で来ている方の奥様がご主人だけが穂先に登られたけど、穂先はかなりシビアで、今はガイドパーティーが入っていて、そのザイルやシュリンゲなどを使わせてもらえるから、撤去されないうちに登ったら?とありがたいアドバイスを頂いたので、私もいざ穂先に出陣です。




ギャラリー一杯いるなかを滑るのがちとプレッシャー 見えている先の下が見えないのがちょっと斜度を感じる。
ふぅ〜、至福のひととき     登って滑って、滑って登るが山スキーの原則



今までは<まずは滑り>に神経が集中していたので、穂先は相当に雪がバシバシについていてかなり難しいだろうと漠然と思っていたものの、なんとかなるかな?って思ってました。(登る前は小屋入り口に大きく警告が出ていたのに気づきませんでした。苦笑) ただ、兼用靴なので足が思うように動くかどうか?それが心配です。緩すぎるとブーツが脱げかかったこともあるので(笑)、穂先で脱げたら大変なので、ほどほどの緩め方でないとまずいです。本当のゲレンデブーツに比べるとずっとラクですが、やはりギブスチックな感覚は兼用靴の場合は感じられます。装備はもちろんピッケルを持って行きますが、何かに役立つかもと思い、念のためにもう1本ストックも持参することにしました。(これは実際良い点も悪い点もありました。)


14:10頃登りだし。この時間から登るのはやや遅く、先ほどまでの渋滞も大分解消してきているようです。GWの時期の穂先だと、例年では雪はあまり多く着いていないことが多く、多少の雪はあるもののさほど苦戦するという状態にはならないという感覚があります。
でも今年の槍の穂先は真っ白で、まるで2月3月の厳冬期並の雪の着き方です!!取り付いてすぐに、「これはヤバイ!」って思い始めました。最初の一歩から雪道なのは見てのとおりですが、それなりにアイゼン歩行なので、慎重に慎重に歩きます。登る分にはそんなには恐くないですが、下ることを想像すると高度感もあるので、恐いかな?と考えると恐いです。しばらく登ると下のはしご(たぶん下から3分の1位の場所)が登場。このあたりから、途中断念組や、下山してくる人達とすれ違うようになります。もう少しすると、クサリ場がずっと続きますが、主に左手がクサリですので、左手にストック持っているので手首にぶら下げるようになります。夏道ならばどってことない岩も、アイゼンをつけていると、アイゼンの前歯をそっと岩にあてがって登るようです。クライミングの練習をしていて良かった・・・って思うシーンもありました。


ある所まで行くと、下山してくるツアー客(お客様15名のAツアーさん)が一杯いたので、彼らは微妙な位置の人もおり、なんせ15名もパスするのにアイゼン着けていて細い場所でのすれ違い&ロープをくぐったりカラビナを架け替えてのパスなので、結構シビアでした。それなりに皆さん要領よく私をパスさせていただきました。それを越すと山頂直下のやや下あたりで、ほとんど鎖が雪の下なのか?とにかく斜面は雪だけになってちょうどツアーのガイドさんがザイルをそろそろ撤収する所で上で張っていてくれたので、「どうぞロープ使ってください」と言われたので、自分が登るのを待っていてくださっているので休む間もなくロープを掴んで登ってしまいました。(上から見ていた山頂で一緒になった男性は私が物凄い勢いで登ってきたので、焦ったとか・・・) やっと、ツアー全員をパスすると、あとは2箇所のはしごがあった。立派な鉄はしごにアイゼンを丁寧に載せて登ると、待望の槍ヶ岳山頂でした!!


穂先は360度の雪山の壮大な景色が展開する素晴らしい穏やかな天気。肩は風が強く吹いていたけど、穂先は本当に風も全くなくて穏やかな景色です。ガイド山行?らしき男性2名女性1名の3名パーティーと九州から来ていた単独50代位の男性と私だけです。喜んで穂先の方に行こうとしたら、ガイド?が山の名前を解説している途中だったので、髭のお客さんらしきが私に「鹿島槍が見えなくなるから邪魔しないでください・・・」みたいな風に言われたので、ちょっとなあ・・・・。山頂は雪で狭いし、ロープも彼らはついているので、自由に動けない。やっと解説が終ったので穂先に辿り着いて記念撮影。ちょっと高度感があって、雪で滑ったら恐いので及び腰になってしまいました。喜び一杯と言いたいところですが、下ることを考えると素直に喜べる心境じゃあ、ありません。(苦笑 しんみり〜〜)


穂高方面、笠ヶ岳、乗鞍岳、常念山脈、双六などの裏銀方面や薬師方面、立山、鹿島槍なども見えてます。前日に降った雪のお陰もあって、どこもかしこも白銀の素晴らしい景色です。名残惜しい気分ですが、下りも心配なので、ガイドパーティーが降りる後に私も降りることにします。九州からの男性は、最後になりたくないようなので「自分の方が先に降りる」と言って、私が山頂の最後の一人になりました。ガイドパーティーはロープでアンザイレンしているので安心してガンガン降りると思いきや、かなり苦戦してます。特に女性の方は恐がってしまっているようです。あまりに時間がかかるので、上ふたつのはしごが終るあたりで、ガイドらしきが先に私に降りていいですよ・・・と言うので、先の行くことにしました。


このはしごの場所からしばらくが一番シビアな場所です。下から見ると、くの字上の雪田みたいな場所です。九州の男性が後ろ向きになって、ピッケルのピックを斜面に刺して降りているのを見て、自分もそうすることにしようと思って、さてそろそろ降りようと鉄のはしごを掴んでいた時でした。なんと
上からバレーボールを少し小さくした位の大きさの雪の塊が音もなくMINMINの右頬を直撃!!!危うく頭を持っていかれそうになりました。思い切り拳骨で殴られたような気分です。その時はかなり動揺して、緊張が走りました。上のガイドらしきが落としたようです。雪が緩んでいて、氷やら雪の塊がすぽっと剥がれるシーンがそれまでも結構あったのでやむなしか。このあたりは夏山ならば斜面を普通に降りれるぐらいの場所だとは思うけど、雪だとスリップすると超恐い斜面で、山側に体を向けて右手にピックを一手一手差し込みます。左手はストックを持っていたので、ストックの柄の先端の部分を雪に押し込むようにします。アイゼンの前歯を斜面に1歩1歩蹴りこみます。ダブルアックスではないですが、2本でバランスがとってくだります。


その緊張の先は、今度はずっと鎖が続き、登ってくる3名ぐらいを適当な場所でパスさせます。ずっと緊張がそれなりに続き、アイゼンをひっかけないように丁寧に降りていきます。ようやく最後の後半になって、やっと頬が出血しているってことに気づいた次第です。一人ぼっちになるのも恐いので、前を行く九州の男性とあまり離れ過ぎない程度に降りていきます。やっと、最後に肩に戻ったとき、やっとほっとして登頂の喜びに浸れました!!! 



これからあの頂へ。武者震いするほどの厳冬期の山 余裕がなくて写真は行動中はこの1枚のみ。
下部のはしごあたり。バリバリのえびのしっぽが一杯♪
槍ヶ岳山頂(3180m) 山頂から槍ヶ岳山荘。雪の中にまだ半分ぐらい埋まってます



喜びつつも、緊張がほぐれてへろへろな感じで小屋に戻ってきたのが4時前のこと。やっと兼用靴を脱いで小屋に上がろうとしていたら、なんと声をかけてきた方がいた。なんと去年から何度か山スキーシーンでお会いしている山スキーMLでもお馴染みのちば山の会のテレマーカーのKさんだ!去年のGWの蓮華温泉から雪倉岳の山行でも登山口からバッタリでした。今回はKさんは山岳会で薬師岳に行くつもりが、靴を忘れてしまって急遽今日は単独で飛騨沢から登ってきたという。ちょうど今着いたばかりという。大変嬉しい再会です。


部屋に戻って鏡で見ると、お顔はそれなりに擦り傷の跡が幾つかあってちょっとオドロしいので、お顔をクレンジングすると大分目立たなく?なった。歯に損傷が無かったのは助かった。拳骨で殴られたことは自分はないけど、まさにそんな感じだったので、あの時しっかりとはしごを掴んでいて本当によかったとつくづくと思う。ひと寝入りしてから夕食を食べる。たまたま目の前に座って食べていた単独の男性と話をしていると、この方も飛騨沢を単独で登って来られた山スキーの方だった。(以後Oさんとします)なんとなく話をしていたら、Kさんとずっと前後して登って来られたことが判明。四国からはるばる来られたというので、すっごい気合だなあ。夕食後、夕焼けを見に外に出る。夕暮れに染まった穂先もまた神々しい。登った後の方がちょっとだけ優しく見えるのは気のせいか? 


ストーブのある談話室でまったりと食後のひとときを過ごす。Aツアーのガイドさんも一仕事終えたので大変寛がれていた。GWのこの山に来るために、ずっと一通りの冬山のトレーニングに参加してきて、問題のない方だけを連れてきたそうだ。確かに一通りのセルフビレイなどは各自できていたので、なるほどと実感。私は先ほどロープを使わせて頂いたので、お礼を言った。また槍澤ロッジでお会いした私のHPを参考に去年スイスの山に行かれたという方ともお話したりする。なかなか楽しいひとときでした。


消灯がきても、槍の穂先に登れた興奮や緊張感で疲れてしまって(あの雪の塊が降ってきた瞬間がフラッシュバックのように脳裏をぐるぐるしてしまって。。。。トホホ)、あまり眠れなかったです。明日は理想的には大喰岳東面を滑走して槍沢に2500m付近で合流して登り返してから、飛騨沢滑走が希望だったけど、今日一杯冒険をしたので、明日はこのままKさん達と滑走する方がいいかな・・・・・・・と思いつつ、うとうととしながら朝を迎えた。



槍澤ロッジ発 6:20 大曲付近(2135m) 7:23〜30 天狗原分岐 8:30
休憩(2590m付近) 9:03〜15 殺生ヒュッテの少し上 10:10〜25 槍ヶ岳山荘 11:15〜25
殺生付近登り開始 12:40 槍ヶ岳山荘戻り 13:18 穂先へ出発 14:10
槍ヶ岳山頂 14:40〜15:00 槍ヶ岳山荘戻り 15:50




      (3日目へ)




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